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福岡高等裁判所 昭和24年(つ)816号 判決

被告人

和田敬一

主文

本件控訴を棄却する。

理由

よつて先づ、原審第一回公判調書を調査して見るに、なる程裁判官は檢察事務官の請求にかゝる(一)乃至(六)の書類の内所論(六)の被告人の供述調書を後に取調べることにして前記各書類全部を取調べる旨の決定を宣し、之によつて檢察官事務取扱檢察事務官は、前記各書類を順次、朗読し裁判官に提出した旨の記載はあるが、右(六)の供述調書につき、その後取調べの決定もなされて居らず、又立会檢察事務官がこれを朗読して裁判官に提出した記載もないのに記録に編綴されているところから見れはこの被告人の供述書は結局、適法な証拠調を経すして原審裁判官に提出されたものと謂うの外はないので、かゝる供調書を受理した原審の訴訟手続は法令に違反するものと認めさるを得ないであろう。然し乍ら、飜つて原判決の説明を見ると、被告人の公判廷における供述と、占領軍ドーナルド、アールレース作成の取調理由と題する書類を証拠として掲げて居る丈けで所論供述調書を証拠に引用していないことが明瞭であるから、前記訴訟手続の違反は何等判決に影響を及ぼすものでないと解せらるるので、これを以て原判決破棄の理由となし得ない。

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